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2021.10.12

落成式!

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先日、園庭の落成式にお招きいただきました。

 

  前日にあった地震の影響もあり、当日、乗ろうと思っていた電車が止まっていたり…

 急遽、新幹線等を駆使してなんとか式の時間には間に合いました!

言い訳になりますが、色々ハプニングもあり、前で話す事を前日までに覚えていこうと思っていたのですが^^;覚えられず…

当日は、とても暑い中子どもたちもしっかり座って聞いていてくれたので、カンニングペーパーを持ってお話しようと考えていた内容を急遽、可能な限り端折って話をしました(汗

なので、当日、カンニングペーパーに書かれていた内容を書いておきます。

『本日はお招きいただきましてありがとうございました。

このお話を一番最初に頂いたのは昨年の11月28日でした。今日が10月8日ですので、まさに十月十日の今日、この園庭が産声をあげた事になります。

 

今日は我々が園庭を設計する際に考えた事をお話させて頂ければと思っております。

 岩舟メインパース最終(植栽あり)

 

今回のプロジェクトでは、コロナ禍ではありましたが、子ども達にも出来ていく過程をしっかり見てほしいと考えておりました。

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 今、多くの物は、買って、すぐポンと置かれて、そのまま壊れたらゴミとして廃棄されて行ってしまいます。出来る過程を知っていれば物が壊れたとしても、直す知恵も芽生えると常日頃考えている事もあり、今回のプロジェクトでは、子ども達に徐々に出来上がって行く過程を見てもらいたい。 物が人によって作られていく過程をしっかりと経験の一部にしてもらいたいと考えておりました。

 さて、デザインの方に話を移しますが、今回の園庭では子どもの遊びを規定しない環境でありたいと考えました。

「丘」を中心とし、遊びが展開し、遊び込む中で「火」や「水」「土」や「木」と触れあい、種類の違う「丘」だけがある事で、子ども自身が各々で遊びを創造したりと、一人ひとりが主体的に興味を持って関わる事が出来る「余白」を持った環境づくりを心がけました。

丘は手前を低く抑え、奥の人工芝で出来た丘を高くする事で、園舎のウッドデッキからも子ども達を見守れる様、工夫がしてあります。12

 

 さて、幼児教育要領書やこども園教育要領が2017年に抜本的に改訂されて2018年度から施工されました。

恐れながらも、これを要約しますと、子どもが「主体的」で「対話的」で「深い学び」が得られる様、環境を通じて保育をしていく事で、子どもの生きる力を育んでいこうと言うものに変わりました。

 

 実は、それまでの教育のあり方ではちょっと行き詰まりが見えていたのです。

とても素直でいわゆる良い子には育つのだけど、…何かをしてあげたり、してもらうまで自分からは動く事が出来なかったり…

平らな道を歩いていて、普通に転んでしまう子が増えてきたり、しかも、転ぶだけなら、まだ良いのですが、受け身としての手もつけず、顔を擦りむいて怪我をしてしまう子がどんどん増えてきてしまったのです。

  さすがに、これでは、ちょっとまずいよね…と言う事になり、「生きる力」育むと言う事を念頭に、幼稚園、保育園、こども園がそれぞれ一丸となって教育の根本から変えて行こうというのが18年度に抜本的な改訂に至った経緯でもある様です。

 幼児期は頭の中で考える論理的な知識よりも、身体を使って学ぶ、身体の知が何より大切だと言われてます。

身体の知はパトスと呼ばれ、経験を何度となく繰り返す事でしか身につけられない知であると言っても過言ではありません。

怪我をする事も身体の知の一つとも言えます。大事にいたらない小さな失敗や怪我を通じて多くを学び、それから先に怪我をしない身体を身につけられる様になっていきます。

 幼児期では、失敗や小さな怪我は学びの元であるとも言っても過言ではないのです。

 よくよく考えてみますと、我々世代、或いはそれ以上の世代の方は当たり前に経験されてきた事なのではないでしょうか?

何もない「丘」だけの環境の様なところから遊びを生み出す創造力であったり、失敗を失敗のままとせず、学びへと結びつける粘り強さであったり…

怪我をしない様にお兄さんお姉さんの振る舞いをしっかり見て真似てみたりと、ところが、今の子ども達にはそう言う経験がなかなか与えられていません。

環境や機会がない事で、今は身体の知を育む経験がごっそりと抜け落ちてしまっているのです。

 

ただし、今の子ども達にも環境さえ用意すれば、今も昔も変わらず、遊び込めると言う事を我々は多くの園の子どもたちからも見せてもらってきました。

だからこそ、我々も得てきた経験を今の子ども達にも返して行きたい!…そう言う想いでこの園庭はデザインしてあります。

  最後になりますが、今回、園庭は完成いたしましたが、あくまで形が出来たに過ぎません。

もちろん、まだまだ圧倒的に植栽が少ない状況があったりもしますが、

そればかりではなく、ここから、子どもたちとともに日々の遊びを通じた暮らしを展開して、その姿を見て保育者が手を加えていく事でこの園庭は完成に近づいて行きます。』

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※なお、この模様は栃木県のケーブルテレビにて放映されるそうです。栃木県の方はぜひ見てみてくださいね!IMG_3269